ジュンク堂書店池袋本店に立ち寄った。
すると文庫コーナーの平積みの台にポップが。「皇后さま、こちらにひかえております」とだけ書いてある。ハテ?何の本かと思ったら、文春文庫に収められたイギリスのユーモア小説、ジーヴズシリーズがズラリと並んでいる。さすがジュンク堂、なかなかユーモアのセンスがある店員さんがおられるようだ。先頃の皇后陛下のお誕生日での文書による記者達へのご回答の中に、同シリーズへのご言及があった。天皇陛下が譲位された後、ご自身のスケジュールに余裕が生まれたら読んでみたい本として「ジーヴズも2、3冊待機しています」と、ユーモラスに触れておられたのだ。早速、それに反応して、ジーヴズシリーズのコーナーを新設したらしい。と感心していると、文庫本体の帯(おび)に、先の皇后陛下のお言葉を引用し、「皇后陛下もご愛蔵。」と印刷してあった。ちゃんと敬称は「陛下」を使っている(“さま”ではなく!)。更に「ご愛“読”」ではなく、「ご愛“蔵”」と正確に記している。来年4月の天皇陛下のご譲位迄は「待機」のはずだから。念の為に、同文庫のシリーズ第1弾の『ジーヴズの事件簿―才知縦横の巻』の奥付けを覗く。すると「2018年11月15日第12刷」とあった。明らかに皇后陛下のお誕生日でのご言及を受けて増刷したものだ。これを商魂逞(たくま)しいと目くじらを立てる人がいるかも知れない。でも私はそんな気にならない。皇后陛下のユーモラスなご言及で、国民の中から読んでみたくなる人が現れるのは自然だし、それが容易(たやす)く予測できる以上、版元としてはそのニーズに応えるのが仕事だ。むしろ出版社が正確な言葉遣いの帯文(おびぶん)を練った事を褒めたい。書店も、慎ましくユーモラスなポップを作って、皇后陛下のユーモアにお応えしている様子が、何とも微笑ましい(手書きのポップなら、「皇后“さま”」の方がむしろ親しみやすいだろう)。仕方がないので、皇室研究の資料(!)として「才知縦横の巻」を購入した。皇后陛下には申し訳ない事ながら、研究(!)の為にお先に失礼をして読み始めると、これが実に研究の為になる。どうやら、次の「大胆不敵の巻」も購入して、
更に研究を深める必要がありそうだ。